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美容師に必要な資格・免許はどうやって取得する?3つの方法や関連資格も紹介【美容師監修】

美容師への転職を考えているものの、免許を取得するまでにどれほど期間が必要なのか、どのような就職先があるのかなど、さまざまな疑問が浮かぶかもしれません。

この記事では、これから美容師を目指す方に向けて、美容師免許の概要、美容学校の課程と選び方、免許を取得したあとの主な就職先、美容師に役立つ資格などを解説します。美容師の大まかな年収や向いているタイプにも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

美容師の資格とは?

施術している女性の美容師

美容師として仕事をするには国家資格の「美容師免許」が必要です。就職するまでに必要なステップは以下の3つです。

  1. 指定の養成学校を修了
  2. 国家試験合格
  3. 免許申請

まず、厚生労働大臣または都道府県知事が指定した美容学校の必要課程を修了すると、国家試験の受験資格が得られます。美容師の国家試験には年齢制限が設けられていないものの、多くの美容学校が入学資格を高等学校卒業者以上と定めています。

ただし、高等課程の認可を受けた美容学校であれば、中学卒業者も受験することが可能です。学科試験・実技試験に合格したのちに美容師免許の申請手続きを行うと、国家資格を取得できます。

美容師免許がないとできないことは?

厚生労働省が定めた美容師法において、美容師とは下記の通り「美容を業とする者」を指し「美容師の免許を持たない者は美容を業として行うことはできない」とされています。業とは、反復継続の意志を持ち行うことを意味し、有料・無料は問いません。

また美容師法における美容の定義は、以下美容師法に定められています。

美容師法(昭和32年法律第163号)

1定義

美容師は「美容を業とする者」をいい、美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。なお、業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。

美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされており、染毛やまつ毛エクステンションも美容行為に含まれる。なお、美容師がカッティングを行うことは差し支えない。

また、美容師が美容を行う場合には器具やタオル等を清潔に保たねばならない。

引用:厚生労働省 美容師法の概要 美容師法(昭和32年法律第163号)1定義

このように、法で明記されているパーマ・ヘアセット・メイク・カラーリング・まつ毛エクステ(まつ毛パーマ)の施術を無免許で行うことは法で禁じられています。ただし、店内清掃や受付業務、お会計、施術のサポート等は、免許取得者でなくても関わることが可能です。

美容師免許を取得せずに、シャンプーを含めお客様の髪や顔に直接触れる施術を行った場合、美容師法第18条により、30万円以下の罰金が科せられます。
※引用:美容師法(昭和三十二年法律第百六十三号)| e-Gov法令検索

美容師の国家試験の内容とは?

美容師国家試験は、春季と秋季の年2回実施され、筆記試験と実技試験に分かれています。筆記試験では、美容に関連する技術や知識、理論のほか、公衆衛生法や人体の構造・機能、科学、物理、美容法など幅広いジャンルの知識が必要です。

実技試験の第1課題は「カッティング」、第2課題は「ワインディング」もしくは「オールウェーブセッティング」のいずれか一方が出題されます。カッティングでは、モデルウィッグを使用して指定された長さのレイヤースタイルを仕上げます。

セッティングのワインディングでは、指定された種類・本数のロッドを使用して、パーマ巻きの基本となる平巻きを指定時間内に全頭巻き終えなければなりません。また、オールウェーブセッティングとは、パーマ技術が普及する以前に髪を美しくセットする技法として流行したものです。

国家試験の受験資格を得るためにはどうすればいい?

国家試験の受験資格を得るには、厚生労働大臣または都道府県知事が指定した美容師養成施設の課程を修了しなければなりません。美容学校では、必修科目が1,400時間以上、選択必修科目は600時間以上の授業が行われます。

必修科目のカリキュラムは、厚生労働省により科目ごとに必要な授業時間が定められています。そのうち半分以上の800時間以上を占めているのが美容実習です。実習の授業では、カットやシャンプー、カラーリング、ワインディングなどの基礎技術を学びます。

なお、選択必修科目は美容学校によって科目のラインナップは異なります。指定の美容師養成施設を卒業することで美容師国家試験の受験資格が与えられるため、美容学校に通い必要な課程を修了しなければ美容師免許は取得できません

主な美容師養成施設・理容師養成施設は、日本理容美容教育センターのホームページに掲載されているので参考にしてみてください。
※引用:(公社)日本理容美容教育センター 養成施設一覧

免許の申請とは何をするの?

美容師免許を申請する際は、国家試験の合格通知書に同封されている免許申請書1部、6カ月以内に発行された戸籍抄(謄)本もしくは本籍が記載された住民票1部、精神機能障害の有無について診断された医師の診断書1部を用意します。また、9,000円分の収入印紙と登録事務手数料5,200円を支払います。

収入印紙と事務手数料の受領書を免許申請書に貼り付けたのち、必要な書類すべてを公益財団法人理容師美容師試験研修センターに郵送もしくは直接持参して手続きは完了です。免許の申請を行うと、国の美容師名簿に名前が登録されます。
※引用:理容師美容師試験研修センター 免許について

受験資格取得の方法とそれぞれ必要な期間

国家試験の勉強をする受験生

上述したように、美容師になるには法で定められた課程を修了しなければなりません。美容学校には、昼間課程・夜間課程・通信課程があります。

1.昼間課程

昼間課程の履修期間は2年間です。週に5日間、朝~夕方の時間帯に授業が行われます。昼間課程では、美容師になるために必要な知識を短期間で習得できるのがメリットですが、他の過程と比較して授業料は高い傾向にあります。

昼間課程では、国家試験対策を手厚くサポートする学校が多いのも特長です。美容師の基礎知識を幅広く学ぶほかにも、メイクやネイル、エステなどの美容に関する他の技術も選択できたり、社会人としての一般常識を学べたりする美容学校も多くなっています。3つの過程のうち、募集人数の割合は最も多くなっています。

2.夜間課程

夜間課程の履修期間は2年間です。夕方~夜の間帯に授業が行われるため、社会人の方でも働きながら国家試験に必要な知識や技術を身に付けることが可能です。夜間課程は、昼間課程と比べた場合、授業料を抑えられるなどのメリットがあります。

学校によって授業の開始時間は異なりますが、1日あたりの授業時間は3~4時間程度と短く、卒業までの2年間で効率よく学べます。なお、夜間課程の場合、選択できる美容学校が昼間課程ほど多くないことに加え、コースの選択肢も少なくなりがちです。

夜間課程を選択する際は、学びたい内容が学習できるかどうか忘れずチェックするようにしましょう。

3.通信課程

通信課程の履修期間は最短で3年間です。スクーリングと呼ばれる対面式授業に出席し、日本理容美容教育センターが実施するレポートの提出を行うことで、国家試験に必要な課程の修了を目指します。勉強する時間帯を自分のペースに合わせられるため、仕事やプライベートと両立しやすいなどのメリットがあります。

美容学校に通学した場合と比較して、学費は大幅に抑えられるものの、スクーリングの時間だけで疑問を解消できないといった点はデメリットになるかもしれません。

美容師免許を取得したあとの主な進路は?

接客している美容師

美容師免許を取得したあとの就職先は、美容室やブライダル業界、ヘアメイク事務所、トータルビューティーサロンなど幅広い選択肢があります。

美容室

美容師の就職先として、最も多いのは美容室です。美容室には、個人店からチェーン店までさまざまな規模のサロンがあります。また、雇用形態も正社員やパート・アルバイト、業務委託など多様です。

美容室に来店したお客様に対して、シャンプー・ブロー・カット・パーマ・カラーなどの施術を行うのが美容師の主な仕事です。お客様のカットを担当するスタイリストになるまでの期間は、アシスタントとしてスタイル作りのサポート作業を行うことで必要な技術や知識を身に付けていきます。

ブライダル業界

美容師には、ブライダルヘアメイクアーティストとして活動する選択肢もあります。ブライダルサロンや結婚式場、ホテルに併設された美容室などが主な就職先です。ブライダルに特化した美容師を目指すのであれば、美容学校を選択する際に、ブライダルコースがあるかどうかをチェックしてみましょう。

メイクやヘアセット、花嫁着付けの基礎知識とスキルを在学中に学んでおけば、ブライダル業界の就職に有利です。ブライダルヘアメイクアーティストの仕事は、結婚式の当日だけではありません。

準備や前撮り(写真撮影)をはじめ、挙式の当日から披露宴まで花嫁に付き添い、ヘアメイクや着付けの手直しを行います。また、結婚式だけでなく、ブライダルフェアなどのイベントに携わることもあります。

ヘアメイク事務所

美容師免許を取得したのちに、ヘアメイクアップアーティストを目指す美容師も少なくありません。仕事としてヘアアレンジやブローの技術を提供するには、美容師免許が必要です。ヘアメイク事務所に就職した場合には、テレビCMや映画、ファッションショーなどのさまざまな現場でヘアメイクを行います

また、アーティストのライブやファッションショーなどの現場で活動するヘアメイクアップアーティストは、技術力の高さだけでなく、トレンドをいち早くキャッチすることや情報収集を怠らない姿勢も求められます。仕事の内容によっては、早朝や深夜の勤務となるケースもあるため、自己管理が必須とされる職業です。

トータルビューティーサロン

トータルビューティーサロンでは、ヘアメイクやまつ毛エクステ、エステなど、あらゆる美容の施術を1箇所のサロンで提供します。この中で、美容師が担当するのは、カット・ヘアカラー・パーマ・ヘッドスパ・トリートメントの施術です。

上述したように、まつ毛パーマやまつ毛エクステなどの施術に携われるのも、美容師免許の取得者です。

美容師免許以外にも取得しておくとよい資格は?

カットの練習をしている美容師

美容師の仕事に活かせる資格を取得すれば、より活動の幅を広げられます。

美容師関連の資格2選

髪に関して深い知識を持つ美容師は、根拠のあるアドバイスを行えるため、お客様からの信頼が高くなります。また、将来サロンを経営する際に必須となる資格も知っておきましょう。

ヘアケアマイスター

ヘアケアマイスターは、一般社団法人ヘアケアマイスター協会による民間資格です。受験資格は、美容師・理容師免許を取得して美容師の仕事に従事している者と限定されています。ヘアケアマイスターの仕事は、お客様の髪の状態を考慮して当日の施術に関する的確なアドバイス行うことです。

また、ダメージレベルや髪質を見極めてホームケアに関する提案をしたり、次回の施術についてアドバイスしたりするのもヘアケアマイスターに求められる役割です。認定試験には「プライマリーコース」「ミドルコース」「ヘアケアマイスター1次」「ヘアケアマイスター2次」といった4つの段階が用意されています。(※2024年3月時点)

毛髪そのものについて深い知識を身に付けることからはじまり、カラーやパーマの仕組みと、ダメージ対策について学ぶほか、頭皮に関する知識やコミュニケーションスキルなど、幅広い知識が問われます。ヘアケアマイスターを取得すれば、毛髪知識スペシャリストとして活躍することが可能です。

管理美容師

管理美容師とは、美容室やサロンで働く美容師が取得できる資格です。美容室内の器具の消毒、作業場の整頓などの衛生管理や、感染症の予防策を行うなど公衆衛生の向上を行う役割があります。美容師法第12条の3では「美容師の従事者が常時2人以上になる美容所において、管理者を置く必要がある」と定めています。将来的に自分でサロンを経営したいと考えているのなら、取得しておいたほうがよい資格です。

管理美容師の受験資格を得るには、美容師の免許を取得してから3年以上業務に従事し、都道府県知事が指定した講習会の課程を修了しなければなりません。
※引用:公益財団法人 理容師美容師試験研修センター

その他おすすめの関連資格3選

美容師の仕事に活かせる資格はほかにも複数あります。自分が目指す将来の美容師像を具体的にイメージしながら、活かせる資格を見つけてみましょう。

色彩検定

色彩検定では、配色ルールの理解や配色技法に関する知識が身に付きます。美容師のほかに、ヘアメイクやアパレル、コスメ業界で働く方の多くが取得している資格の1つです。検定レベルは1~3級までの3段階に分けられています。

色彩検定の知識があれば、お客様1人ひとりに似合うヘアカラーをスムーズに提案できるだけでなく、ファッションとのコーディネートに関するアドバイスもしやすくなるはずです。また、色の表示方法や混色理論の知識があると、カラーリングのレシピも的確に考えられるようになるなどのメリットもあります。

カラーコーディネーター

カラーコーディネーターは、実践的な色彩の知識を習得できる資格です。色彩心理学を学べるため、お客様が求めるヘアカラーに対して、より具体的な提案しやすくなることがメリットです。学んだ知識は、ヘアカラーだけでなく、サロンのインテリアを見直す際にも役立ちます。

お客様にとってより居心地の良い空間作りと、施術に必要な色彩感覚の双方を身に付けられる資格です。

日本メイクアップ技術検定

日本メイクアップ技術検定は、メイクアップを職業とする方の技術力や知識力アップに役立つ資格です。1~3級の3段階に分かれており、試験には実技検定試験も含まれます。3級は誰でも受験できますが、2級の受験資格を得るには3級を合格しなければなりません。

また、1級は2級合格者のみを受験対象者としています。試験では、スキンケアやベースアップメイク、フルメイクアップの過程や仕上がりなどが審査されます。美容師としてスキルアップを目指す際に検討したい資格です。

美容師の年収はどれくらい?

厚生労働省が調査した「令和4年賃金構造基本統計調査」では、10~99人規模の美容室の年収は322万8,000円、100~999人規模の美容室では年収453万2,000円と報告されています(※)。

国税庁の調べでは、1人あたりの平均給与は461万円であるため、美容師の年収は日本人の平均給与を下回ります。

美容師の給料形態には、固定給、歩合給、固定+歩合給のいずれかに該当するケースが一般的です。歩合給とは、指名の数によって給与が変動する仕組みのことです。
多くの美容室では、固定+歩合給を採用していますが、最低保証の給与を設定しているサロンが大半です。お客様の指名によって給与が上がる仕組みは、モチベーションアップにもつながります。

また、ヘアケア商品を販売した売り上げのうち、一部が歩合給として支払われるサロンもあります。最近では、指名客を増やすために、SNSやブログを活用している美容師も増えています。
なお、アシスタント時期の平均給与は18~25万円(※)が一般的です。
※引用:令和4年賃金構造基本統計調査(職種)第1表

美容師の給料については、以下記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
▷「美容師の給料・年収はどれくらい?アシスタントから店長まで各ランクの給料など徹底比較【美容師監修】」

美容師に向いている人は?

美容師の道具

美容師に向いているタイプは、どのような人なのでしょうか。3つの大切な要素に分けてご紹介します。

美容やファッションが好きで、トレンドに敏感な人

美容やファッションの情報を敏感にキャッチしている人は、美容師に向いています。最新の流行りのヘアスタイルやカラーといったトレンドを反映した提案ができることで、よりお客様の満足度を高めます。

ファッションや美容がもともと好きな方は、お客様の求めるスタイルについて理解しやすく、ニーズに沿ったアドバイスができる人が多いです。トータルコーディネートについてさまざまな提案を行える美容師は、お客様からの信頼感がアップします。

人と接するのが好きな人

来店時のカウンセリングからスタイルが仕上がってからのアフターカウンセリングまで、美容師にはコミュニケーション能力が欠かせません。そのため、人と接することが好きな方に向いている職業です。

最低限のビジネスマナーや丁寧な言葉遣いは、美容師として身に付けておきたいスキルの1つです。中には、会話を求めていないお客様もいるため、1人ひとりのニーズを汲み取る能力が求められます。

向上心がある人

美容師の仕事はアシスタントからスタートします。スタイリストになるためには、営業の中で必要な知識を身に付けながら、お店の閉店後などに、コツコツと練習を積み重ねて技術を習得しなければなりません。スタイリストになってからも常に向上心を持ち、新しい技術を学び追求する姿勢が求められる職業です。

まとめ

技術職である美容師の仕事は、将来的にもAIに置き換えることが難しい職業の1つとされています。

美容師を目指すためには、美容学校で必要な課程を修了し、国家資格を取得する必要があります。美容師免許取得したあとの選択肢は幅広いため、自分が将来どのような美容師になりたいかをイメージして、活かせる資格取得を検討するのもおすすめです。

美容師の多くは美容室へ就職する傾向にありますが、ブライダル業界やトータルビューティーサロンなど、現在はさまざまな業界で美容師が活躍しています。「人が美しくなることに喜びを感じる」「美容で困っている人の手助けをしたい」と考えている方は、本格的に美容師を目指してみてはいかがでしょうか。

プロフィール画像

監修者emi

トップスタイリスト

EIL GROUP

トップスタイリストの技術・一流の薬剤・リーズナブルな価格で人気を集め、全国で店舗展開しているトータルビューティーサロン「EIL GROUP」(合同会社LIBEX)に7年勤務。美容師歴25年。ヴィダルサスーンヘアカラーグランプリ受賞。骨格診断、カラー診断を用いたカウンセリングに定評があり、似合わせを得意とする。

執筆者Haruka.Y